「失敗の本質」 中公文庫
大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗としてとらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用することをねらいとする本書は、学際的な協同作業による、戦史の初の社会学的分析である。
この本は一言でいえば、破たんする組織の特徴を説明する本である。大東亜戦争の戦いから、日本がどういった失敗によって負けたのかについて、実際に投機された機体数や戦った場所、地形、その時の相手の戦略など含めた説明から、それによって得られる教訓までがセットになっている。(重要な教訓までの文章が長いです…実際の失敗部分の話は教訓の理解を深めるので、先に三章を読んでから戻る形でもよいと思う。)
日本が量的問題で負けることが分かっていたとしても、うまい負け方というのはあるはずである。どうしてこのような結果になってしまったのかについて、戦略史の専門家によって考察されている。読んでみると、この戦争は長期的な視野にたって開幕に至ってはいない。当時の首相にこの戦争は勝てるのかと聞かれたところ、勝てるとは答えなかったという。山本は一年、二年は猛威を振るうけれども、それ以上はやってみないと分からないという答え方だったという。この答えはつまり、先を見通した戦争ではなく、数年で終わらせる予定の戦争であったことが分かる。山本は戦略として、艦隊決戦をすることを考えていた。短期決戦は、食糧や兵料によらない戦い方ができる一方でその両者を軽視してしまうおそれがあった。この戦争では、この二つを蔑ろにしてしまったことが戦略的失敗の一つの原因として書かれている。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
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個人的に
本書からは、現在の政治をどう見るかに役に立つと思う。表紙に現東京都知事の言葉があったが、この本から得られる教訓と東京都の政治の行方を照らし合わせて考えてみると面白いと思うし、理解が深まるのではないだろうか。また、短期的な戦略だけでなく、長期を見通すこと、改めて考えさせてくれた本だと思う。
<戦争の短期終結は希望する所にして種々考慮する所あるも名案なし。敵の死命を制する手段なきを遺憾とす。>