つばさものがたり・角川文庫・雫井脩介
パティシエールの君川小麦は、自身の進退に重い秘密を抱えたまま、故郷・北伊豆で家族とケーキ屋を開いた。しかし、甥の叶夢からは「ここは流行らないよ」と謎の一言。その通り、店は瞬く間に行き詰まってしまう。力尽きた彼女に新たな勇気を吹き込んだのは、叶夢と、彼にしか見えない天使の”レイ”だった…
個人的に
以前、模擬試験を受けていたときに春田シェフと小麦とのやりとりを読んで、いいなと思ったので買った本書。重い秘密を抱えながらも、ひたむきに前を向いて歩いていく姿はよかった。一方で、再起していく様子はあまりにもうまくいきすぎていると感じた(それでもいいじゃないか)。この小説を短くまとめれば、叶夢とレイという存在が主人公の心の重さを解きほぐしていくようなそんな小説である。しかし、天使にオーラを食べられると寿命が縮んだりするのだろうか…
気になったのは、将来的に店舗を継続するために、スーシェフの期待を寄せる、義理の姉、道恵がスタッフを降りようとしたときに、やめないように懇願したこと。それと五条とフランスに行く時と店舗で働く二度にわたる辞退。小麦が思う、母親とお菓子店をやりたいという気持ちが、ものすごく強かった結果だと思う。
メモ
・舞台は北伊豆(静岡県)
春田シェフの下で働いていた時は、東京。
・他の著作は、「クローズド・ノート」(既に映画化)などがある。
・天使の翼
天使の翼は猛禽類のつばさと同じものとされている。また、天使は神学的には肉体を持たないとのこと。
( ^^) _旦~~
一度、小説の問題で出た本書。(確かその時は、小麦と春田が会話している内容だったはず…)その内容が気になったので読みました。独立したパティシエとして、ひたむきに挑戦していく様子は、感慨無量です!
ろうそくが燃え尽きる前に放つ、一瞬の鮮やかな光…自分にとっては今がそうなのかもしれない。神様が与えてくれた最後の自由時間なら、それを無駄にしたくはなかった。まだ自分は何も成し遂げてはいない。