高校を卒業した未芙由は上京し、親戚の鹿島田家で暮らすようになるが、家族がどうも変なのだ.---------「幸せ」を望むのは罪なのか。物語の残るのは「崩壊」か「誕生」か。
この類の読んでいる書物の量が少ないので説得力がないが、人情が生々しさが上手に書かれていると思う。乃南さんの本はは以前、短編集で読んだが、その時とはガラリと印象が変わっていた。
主人公がしっかりした目的もなしに上京しているのに、生活面における些細な行動については抜け目がないので、つかみどころがないなと感じた。(それでもしっかりしているのか、していないのか...)
題名のウツボカズラは誰を指しているかというのは解説にも書かれている。ウツボカズラの花言葉は「憂いを晴らす」| ネペンテス ギリシャ語:ne(無) penthos(憂い)
筆者が、ウツボカズラを誰を意図して書いているかは分からないが、私はやはり主人公だと思う。ウツボカズラは最初は小さな種子から成り、発芽して、本葉からでた最初の小さな捕食器から成長して、大きな捕食器と葉を身に付けていく。主人公がまるで家族を一人ずつとらえていくかのように。(捕えやすい人物から順に...)そして、最終的に家族の中心人物である父親の母までを飲み込んでいく。
社会の日常にある一種の怖さを感じた。
※ちなみに主人公の名前にある「芙」はハスの意味で「清らかな心」、「沈着」といった意味がある。本編と関係があるのかもしれない。
※ドラマで「19歳という中途半端な歳」について言及されていれば、考えようもあるけど…。
「物事の始まりの日は、雨がいいの。『雨降って地固まる』っていうんだから」