義血侠血(ぎけつきょうけつ)・泉鏡花

【あらすじ】

ある夏の日、馬丁とは見えない男の御す、高岡から石動へと向かう乗合馬車に、一人の怪しい美人が客となる。
そこへ普段から反目しあっている人力車が通りかかって、両者は自然相争う形となり、これがもとで御者は職を失ってしまう。
後日、夜更けに涼みに出たその女、実は滝の白糸という評判の水芸の太夫は、浅野川にかかる天神橋の上で先日の御者に出会い、男の身の上を聞いて彼の望みの実現を援助しようと申し出た。
こうして男は東京へ遊学したが、その学業の成就も近くなったとき、白糸は仕送りの金を強奪されてしまう。
悲嘆と絶望とに沈んで街をふらついているうち、見えざる手に導かれるように、今度は自らが強盗の加害者となり、殺人まで犯してしまった彼女は、数奇な巡り合わせにより参考人として裁判に出廷し、そこに思いもかけず先の御者の姿を見るのである。

義血侠血

義血侠血

 

個人的に

 最初読んだときは、高野聖に収録されていた短編だったのですが、見事にひきこまれました。特に水島(白糸)が村越へのお金の工面をしていた矢先に、盗人にお金をとられ、考えを交錯させている場面が一番印象的でした。

良心は疾呼して渠を責めぬ。悪意は踴躍して渠を励ませり。渠は疾呼の譴責に遭いては慚悔 し、また踴躍の 教唆を受けては然諾せり。良心と悪意 とは 白糸の むべからざるを知りて、 ついに迭いに闘いたりき。

泉 鏡花. 義血侠血 (Kindle の位置No.845-848). . Kindle 版.

 メモ

・明治中期の石川県金沢が舞台
・白糸の本名は「水島友」。泉鏡花が生涯追求した女性像でもあるとのこと

 ➡ 「色白く、鼻筋通り、眉に力味ありて、眼色に幾分の凄みを帯び、見るだに涼しき美人なり」

・師の尾崎紅葉による添削の手が入っており、文章が簡潔になっている

 → Ex.裁判の下りが短いのはそのため。

泉鏡花は金沢三文豪の一人(他, 室生犀星徳田秋声

www.kanazawa-museum.jp

天神橋は白糸と村越が再会した場所です。南西方向にスクロールすると、兼六園が見えます!!(日本三名園の一つ)

 

 ( ^^) _旦~~

  上記のkindleが読みにくければ、現代語訳版もあります。

川は浅野川、山は卯辰山、橋は天神橋

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